木材の乾燥方法には人工的に木材を乾燥させた強制乾燥材、KD(Kiln Dry)材と、自然乾燥材、AD(Air Dry)がありますが、古民家を見る限り自然乾燥材の方が長持ちするのは間違いないと思います。
強制乾燥材は内部に割れが出ますが、自然乾燥材はおもて面に収縮による割れが発生します。割れが出ないように背割りという、壁で見えなくなる場所に乾燥前に切れ目を入れることで他の部分が割れないようにするための知恵もあります。しかし大黒柱などを見ると四面とも割れがなく、背割りもないものが多く残されており、そんなところにも先人の知恵と経験の深さを感じます。
写真)左から表面から割れが出た自然乾燥材、内部に割れがあるが表面には割れがない人口乾燥材(ただし内部は焦げたように黒ずんでいる)、一番右はいくつもの木片を接着剤で貼り合わせた集成材
最近の住宅では梁材には海外から輸入された米松(べいまつ)と呼ばれる木材が使われます。これは国産の地松(赤松や黒松など)の大径材が入手しにくいのと、輸入材の方が価格が安いからという理由によります。
ただ、多くの方が米松は松の種類だと思われているようですが、米松の英語名はダグラスファー、ファーは日本語ではもみの木と訳されます。
横架材と呼ばれる梁や桁は柱と柱の間に掛け渡され上からの荷重を受け持ちます。木材は曲げる強度に対して復元力で元に戻ろうとする粘りがあるので大きな荷重を支えることができるのですが、ヒノキなどを梁に使わないのは油ぶん、つまり粘りが松より少ないから、だから粘りがある松を梁に使います。もみの木を使うか松を使うかで考えれば、松の方がいいと思います。しかも米松の輸入元はカナダやロシアなどの寒いけど夏場湿気が日本ほどは高くない場所、湿気の高い日本では100年200年のスパンでの耐久性では問題が出てくると思います。
国産の地松が手に入らないなら、古材を再活用するのもひとつの手であると思います。何しろ古材は経年変化で強くなる素材でもあるのですから。
また柱に関しては、真壁の場合には背割りでしょうが、背割りは強度も若干落ちます。現在建築中の家では四面割りという四面に溝をついた柱を大壁の柱には使っています。